その音が消える前に、君へ。
一体、本当に私は何をしているのだろう。
自問自答を何度も繰り返しては、答えを見出せていない。
こんなに彼に関わっても私には、何も返ってはこない。
それどころか、今の自分の行動を恨む結果に成りかねない。
それでも私を動かしてしまう彼に関わってしまう。
何の為に?誰の為に?
過去から学ぶべきことがあって、それを繰り返さないようにと人と関わりを最小限にしようと今まで生きてきたのに。
こんなにも彼と一緒にいたいと願うこの気持ちが私には理解できない。
自分の気持ちが……自分で分からないなんてきっとこれは病気か、暑さのせいか。
どちらにせよこの気持ちはこの臨海学校にいる間で断ち切ろう。
そうでなければ……そうしなければ……
「菅原さん、こっち」
「え……」
呼ばれたのと同時に腕を取られ、榊くんが私をリードするように歩き出す。
外に出た眩しさで目を細めると、潮風が背中を押すように吹き抜けた。
海岸に出る道とは真逆の鬱蒼と生い茂る木々小さな林の細い道へと向かって歩く榊くんの足取りは、まるでここに来た事があるような慣れた足取りだ。
こんな裏道があることなど知らない私の心が少し躍った。