その音が消える前に、君へ。
でもその手は届くことなく宙をかいた。
雨が止んだらしく、軒先の外へと先に歩き出して一度私の方へと振り返り何か呟いた。
でも君のその音があまりにも大きく澄んで響くから、声は私の耳には届かなかった。
どうして、そんなに唐突に聞いてきたの?
どうして約束を急に確かめたくなったの?
君の、想っている人は一体誰なの?
ーー私は、君に想いを伝えてもいいの?
疑問と悲しみが混じり合うこの感情を私は、声にする事も出来ずにその場に佇んだ。
泣き止んだ空は、妙に重たくてどことなく私の気持ちに似ていた。
雲の隙間から覗く太陽が、榊くんを静かに照らしていた。