【完】溺れるほどに愛してあげる


「ん……」





ゆっくりゆっくり、千景が瞼を開ける。


あぁ…良かった。





「千景……!」





あたしもゆっくりゆっくりと彼を抱きしめる。


目を覚ましてくれて良かった。


どこにも行っちゃわないで良かった。



また貴方と目を合わせて話すことができる。


また貴方の目にあたしを映らせることができる。


また貴方を愛すことができる。





「うぅっ…」





改めてその事実を思ったら熱いものが込み上げてきて。


どうしたら止まるかなんてわからなかった。


止めようとも思わなかった。



こうして千景が生きていることが、嬉しくて嬉しくてたまらなかったから。





「無事で良かった…」

「…優愛…」





少し腕に込める力を強くしたら、千景もあたしの背中に手を回してきて。


すごくすごく、幸せな時間だった。


あたしの好きが、千景の好きが伝わり合う。


途中で千景が目を覚ましたと知らせなきゃいけないことを思い出して、慌ててナースコールを押す。


すぐに担当のお医者さんが駆けつけてくれた。





今日は千景の退院の日。





「我々警察がお父さんや千景くん家族にしてしまったこと、そして何より君自身を危険に晒してしまったこと…決して許されることではないと思っています。本当に申し訳ありませんでした」





病院前にずらっと刑事やいろんな人が並んで待っていた。


千景が出てきたのを見るやいなや全員が頭を下げる。


お父さんの言葉が終わってもなお頭を上げようとする人はいなくて。





「…ずっと警察が憎かった。
それは、今でも消えることはありません。
ただ今回俺が助かったのは城崎刑事のおかげだと聞いています。だから…俺のような思いをする人をもう二度と出さないでください」





千景の心からの訴えがあって、千景のお母さんは涙を浮かべていた。





「…だから頭を上げてください」





その一言でばっと頭が上がり始める。

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