【完】溺れるほどに愛してあげる
そう思った矢先、教室で源田があたしに声をかけてくる。
「城崎」
「なに?」
「金田を体育祭に誘ってるって聞いたんだけど」
「…え」
どこから漏れたんだ。
あ、青木が下を向いた…
あたしへの報復のつもりか。
屋上を取り返せなかったからってそれは酷くない?!
「金田とか来られてもなぁ」
「怖いだけだよな」
源田の発言から急にクラスがどよめきだす。
そうなんだ。
みんな金田を怖がってる。
もちろん怖いよ。見た目だってあの集団だって怖くないわけがない。
でもさ、ちゃんと喋ってみればそんなに悪いやつじゃなくて…
何か悲しいことを経験していて、学校すら楽しいと思えない…そんな助けたくなるような人なんだ。
みんなもちゃんと知っててほしい。
仮にも同じクラスなんだから…
「あ、あの人!すっごい足速いらしくて!」
「え、マジ?」
「そ、うそう!だからね、いてくれたらリレーとか…活躍してくれるのになぁぁって…」
こんな程度じゃ金田の体育祭参加、許してくれない?
でもこんな程度、ってこの情報も聞いたことないんだけど…気付いたら口から出ていたんだけど…
大丈夫だよね?金田のあの風貌ならきっと足速いはず…!
「それは心強い!
金田くんに是非とも参加してもらおう!」
そんな委員長の一言でガラリと雰囲気が変わる。
もう彼が体育祭に参加することを拒む様子の人はいない。
彼に参加してもらうことで優勝を目指そうと意気込んでいる。
ほら、もっともっといい感じになったよ。
誰も貴方を嫌がらない。だから参加して…