小悪魔な彼
「そんな…こと…」
「あ。謝ろうと思ってたのよ、私。」
ゆかりちゃんは
ヒールのやたら高いパンプスで
私に近づいた。
そして伏せていた長い睫毛を持ち上げ、私を見た。
「小森さんには言ってないって、言ったじゃない?
あれ、嘘なの。」
「う…そ…?」
「うん。つまり……
もう、小森さんには言ってあるの。
あんたのお父さんの仲間が、
小森さんの両親を死に追いやったんだ…てね。」
―うそ…だろ?
「いつ…いつ言ったんだよ!」
ゆかりちゃんの肩を思わず掴んだ。
「いったいわね!離してよ!」
―ドンッ!
ゆかりちゃんが私を押し返す。
病み上がりのせいか
体がふらついて
その場に尻餅をついた。