【完】ホタル

私は知っている。
ユキは本当は名前を持っていることを。
理由とか根拠とかはない。
でもわかるんだ。
私とユキの間に隠しごとなんてできない。



「じゃあ誕生日プレゼントそれでいいから。」



「しつこいぞ、夏菜。」



「ユキが教えてくれないからじゃん。」



「いつまで経っても子供だな。」



「子供じゃないもん。
 私、16歳だよ?もう結婚だってできるようになるんだから。」



「結婚?……ああ。
 あの人間同士が交わす契の事か。
 くだらないな。」



「くだらなくないよ。ふたりがこれから一生を共にする証なんだから。
 好き合ってるって形に残すためのものなんだよ。」



「興味あるのか?」



「そりゃ、あるよ。」



「ふん、夏菜にはまだ早い。」



「うるさいなあ。」



いつもユキは私を子ども扱いする。
ユキに子ども扱いされるのは、嫌いだ。
もう、出会った頃の私じゃないもん。
あの頃は8歳だったけど、今はもう16だし。


< 12 / 26 >

この作品をシェア

pagetop