【完】ホタル

確かに、人間と妖怪の時間の流れは違うし。
私にとってのこの8年間と。
ユキにとっての8年間は。
全然違うものなのかもしれない。



「そう言えば今年は友達できたか?」



「いらないし。」



「毎年同じことを言っているぞ。
 その調子じゃ、母親とも相変わらずだな。」



「いいじゃん、別に。」



「いい加減素直になれ。」



「なれるわけないじゃん。
 私のユキを引き離しておいて。 
 許せるわけないじゃん。」



「仕方のないことだろう。
 夏菜の母親は俺の事を知らないんだから。」



「わかってるよ……。」



わかってる、仕方のないことだって。
それでも私は許せない。
私とユキを引き離したお母さんを許すことなんてできない。


小学校2年生の時、都会に引っ越してから。
私はお母さんに対する態度が一変した。
必要最低限の事以外は接することがなくなって。
ユキと会えない日々は苦痛でしかなくて。
学校でも極力人と関わらないように生きてきた。


そんな姿をお母さんは見てきたからか。
夏休みの間おばあちゃんの家にいることを。
止めるようなことはしなかった。
私もそれでよかった。

< 13 / 26 >

この作品をシェア

pagetop