【完】ホタル
都会は好きじゃない。
人が多くて、うるさくて。
空が見えない。
窮屈で息がしづらい。
それに、ユキがいない。
ユキがいない場所なんて。
死んでるも同然だ。
隣に座っているユキの肩にもたれる。
夏の夜は暑いはずなのに。
ユキは妖怪だからか冷たくて。
ユキの近くはひんやり心地よかった。
「ユキ、触れていい?」
「……ああ。」
ユキの膝の上に頭を乗せる。
ユキはそっと頭を撫でてくれた。
……好き。
ユキが、好き。
何度、言おうと思っただろう。
その度に言えなかった。
ユキもきっと同じ気持ちだ。
手をつないだり、抱きしめあったり。
誰かと一緒にいることを嫌がるユキが。
私と居ることだけは一度だって拒まなかった。
それでもこの気持ちは言えなかった。