初恋のカケラ【3/13おまけ更新】

「中学の頃よりはかなり町全体が明るいですね」

「だな」

展望台なんてないけど、高台にあるここからの夜景も悪くない。
きっと昼間だったら青い海もバッチリ見えて、綺麗なんじゃないかな。

中学の頃にきた桜祭りでここからの眺めをみたけれど、その時とは全然違う。

あの頃はこうして先輩と並んでここに立つなんて思いもしなかった。ほんの少しのきっかけでこんな風に一緒にいるようになるなんて。

一瞬のうちにまた中学の頃に戻っている私を優しい声で先輩が呼ぶ。

「クルミ?」

先輩の呼ぶクルミは、他の誰よりも優しく甘い。
その響きを心地よく感じながら先輩の方を向くと、

「寒くない?」

名前を呼んでまで聞く事じゃないような気がする。それに手袋も貸してもらったし。

「これ、あるから大丈夫ですよ?」

手袋を持ち上げて見せる。先輩はそれを見て優しく微笑むけど「ん、でも俺は少し寒いかな」と言って手袋ごと私を引き寄せた。

「ちょ、ここ外っ」

「誰も見てないって」

「でも、」

確かに周りに人はいない、けど車は結構停まってたから居ないとは言えないのに。

「じゃあほら、こうすればいい」

そう言って私を前を向かせてから先輩のダウンの中に後ろから包む込む。

たしかに見えないけど、見えないのは私だけって言う……
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