初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「見かけた事あるよ、中学の時。」
「え?」
驚くのは無理もない。だってあの時私は……
「見かけた時は急いでたから」
ううん、全然急いでない。家族と一緒に居たし、それに声をかける勇気がなかったから。それぐらいあの時の私は坂下くんに対して消極的だった。あの時というか、今だってそう。昨年偶然渋谷で見かけた時も声をかけたのはノリちゃんの方だった。
「そうか、それは残念だった」
坂下くんは本当に残念そうに言うから、会えたら嬉しかったのかななんて一瞬勘違いしそうになる。
「ほんと、声かけれたら良かったのにね」
「あの頃は女子と仲良くしてるだけではやしたてられたし。それに、それを恥ずかしいって思う自分も居たしね」
「え?坂下くんが?」
「そうだよ」
硬派で通っていた坂下くんが、実はそんな事気にしてたなんて思わなかった。あの頃今みたいに話せる間柄だったら、もっと違う関係が築けたのかもしれない。
「坂下くんも普通の中学生だったんだね」
「どんな中学生だと思ってたの?」
どんなって。ただ私が一方的に好きで。頭がよくて硬派で。私の中では一番かっこよくて。……手の届かない人。