初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「待ち合わせ、七時なんで。それまでどうしましょうか」
どうしましょうかって。
「愛羅ちゃん。まずは待ち合わせ場所、どこか言ってくれないとそれには答えられない」
彼女はいつも、主語とか重要な語句を自分の中では思い浮かべながら話をするからたまに通じない事がある。さすがにもう慣れたからそこを補う事は出来るんだけど。
「あ、そうでしたー。えと、自由が丘なんです。待ち合わせ」
仕事じゃないからこんな事で怒るわけにはいかない。それにならされた自分も居るからまぁいいかと思ってしまう。
「そう、だったらお茶でも買い物でもできるからまずは移動した方がいいね」
「はい!」
そう、この顔。ニコニコと素直に笑顔を向けられると何でも許してしまうんだ。若い子相手にこんな風に思うなんて、私もどこぞのオッサンと変わらないんじゃないんだろうか。
場所が指定されてるって事は、
「ね?じゃあお店とか予約してあるの?」
「はい!なんか彼のお勧めみたいで。イタリアンって言ってました」
ふぅーん、イタリアンならば今日のこの不意打ちも許さない事もない。まぁおいしければ、の話。
「そ、それは楽しみだね」
「はい!」
あぁ、きっと愛羅ちゃんの彼。この笑顔にすっかりやられちゃってるんだろうなぁ。