初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
「ささ、クルミ先輩。早く着替えて着替えて」
「でも、」
「ちょっとお食事するだけですって、ね?」
食事するだけ。確かにそうだ。その人だってもしかしたら渋々かもしれない。愛羅ちゃんのこの押しの強さなら、彼だってきっとその勢いに負けて友達にお願いしたとかもあり得る。
「わかった。じゃ、ちょっと待っててね」
「はぁーい。私もコレ、仕上げちゃいます」
愛羅ちゃんは自分の髪を持ち上げて、最終のチャックをしている。もう十分仕上がってると思うんだけど。本人的には納得がいかないらしい。
私もいつまでも彼女を見てると怒られそうだから、制服から私服に着替え始めた。
金曜日のロッカーはいつもよりも念入りに化粧直ししてる人が多い気がする。それに服装も色とりどり。若い子が多いからかもしれないけど、きっとみんなデートの約束でもしてるんだろう。
着替え終わった所で鏡に映った自分の姿を見た。
愛羅ちゃんのリクエスト通りにしてきたけど、あくまでも綺麗めであって紹介向きの服装ではないだろう。
ま、いいか。食事するだけだし。
「クルミ先輩。じゃ、行きましょう♪」
語尾に♪マークでも見えそうな愛羅ちゃんが今日の事を本当に楽しみにしていたのがわかる。そんな彼女はやっぱり可愛い。
「うん、それじゃお先ー」
ロッカーに残っていた数人に声をかけ、愛羅ちゃんと二人外に出た。