初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
オーナーにも紹介して軽いおつまみ作ってもらって二人で乾杯する。
さすがにボトルは付き合えないから私はグラスワインにしたけど。

「早い時間に帰って来れたら、絶対ここで食う」

「つまみしか食べてないのに?」

「いや、だからだよ。絶対美味いのわかるし」

一番のお勧めのお店をそう言ってもらえると嬉しい。
彼はお世辞を言うタイプには見えないし、本当においしそうに食べる。お酒も食事もこういう人と一緒なら楽しいだろう。

「マジでいい所教えてもらった」

「そう言ってもらえるとこちらとしても嬉しいです」

そして顔を見合わせて、お互いに笑いあう。

さっきは気付かなかったけど、カウンター席で近くに座って見てみると彼の顔立ちが整っている事がわかる。
そういえばご飯の時に巧さんが「こいつ社内でも人気あるのに全然誰にもなびかないから」なんて言ってたっけ。

「ん?何?」

あまりにもじっと見ていたのか、突然そんな風に問われて

「あーえっと。来月に会うまでに他のお勧めも考えときますね」

「さすがに毎回それだと飲むしかできなくなるから、どうせなら」

話の途中で言葉を止める彼に、そのあとにつづく言葉を想像して戸惑う。それが顔に出ていたのか彼は慌てて、

「あーごめん、つい近所だと思ったら他の日にしないかと思ったけどさすがにそれは図々しいかと思いなおした」

「いや、あのそんなことない、」

あれ?出会いとかそういうの今は欲しくないんじゃなかったっけ。
いや、違う。きっとこれは同級生的な親近感。それに違いない。
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