初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
店を出ると先輩の姿はなくホッとした。だけど、なんていうか……

「いねーじゃん」

小さな声だけどしっかり聞こえた。ホッとしたのに、その言葉で現実に戻された。

「……うん、そうだね」

どうしよう。話があると言われたからには帰るわけにもいかないし。

「この前リョクが言ってたけど。」

急に話しだした相良さんに、私は顔をあげて続きを待つ。

「終わらせるのってそんな簡単じゃねーよ?」

どこか遠くを見るように言う相良さんの方が辛そうで。

「俺は。無理に終わらせるのだけがいいとも思わない」

どれが正解かは分からないけど、今はただ。

「でもやっぱり、今それをしないと前に進めない気がする」

「そうか……」

その時バッグの中から振動が伝わってきた。


見覚えのある番号。名前こそ表示されないけど、それは……

「出れば?」

「……うん」

ピッ


『クルミ?』

「はい……」

『今、店にいるんだけどこれる?』

そのお店は名前を聞けばすぐわかった。
私は相良さんを見ながらすぐに向かう事を伝えて電話を切った。

「あ、」

近くでって言ったけど。どうしたら……?相良さんを見ればニッコリと笑って

「俺、今日は荷物持ち兼ボディーガード、いや今時は執事か?」

「何それ。」

「お嬢様の行く所にはついて参りますよ」

その言葉にやっぱり相良さんの優しさを感じずにはいられなかった。
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