初恋のカケラ【3/13おまけ更新】
話を終えて二人が戻るとノリちゃんが「はぁービックリしたぁ」と言って、やっと呼吸が出来たとばかりにに深呼吸している。まぁ無理もない、美男美女に至近距離でお願いされて頷かない人はよっぽどの強者に違いない。

「話っていうからお料理の感想とかそんなのかと思ったよね」

「うんうん。まさかねぇ、あんな事お願いされるだなんて」

しかも彼や旦那さんには内緒ね?ってウインクまでつけて……
内緒っていうか木村には到底見せられない。

ノリちゃんが本気になる事はないにしてもウットリと見ていたのは事実でそんな事知ったら。と思うと背筋にブルリと震えが走った。

そうだ、木村近所まで来てるんだった。そっちはそっちでノリちゃんには内緒だけど、この感じだと普通に許してくれそうだ。

「でも、なんで内緒なんだろ?」

なんでもオーナーが地元でしていた料理教室の噂を聞きつけて依頼が来たのだとか。少人数制、しかも地元居住者限定で受け付けてたため受講できなかった人が続出していたらしい。その主催者からの口添えもあったから受けないわけにはいかなくなったらしい。

「でもさ、私はあり合わせの料理は得意だけど本格的なイタリアンともなるとさすがに無理だからちょっと嬉しいかも」

「私なんてノリちゃんと違って料理は全然だから大丈夫なのかな?」

「クルミ。それも花嫁修業だと思って頑張るしかない」

花嫁修業……、結婚が決まったわけでもないのにポンと相良さんの顔が浮かんできたのを慌てて消して、

「……がんばるよ」

そう答えるので精いっぱいだった。
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