キミのことは好きじゃない。
思い切って顔を上げたその目の前に颯斗の顔があった。
覗き込んできた颯斗との距離は、数センチもない。
いつもなら飛び退いて、ヘラヘラと笑って誤魔化して自分の気持ちから逃げたと思う。
それじゃあダメ。
それなら……。
颯斗のシャツの胸元を両手で掴み寄せた。
「百合⁉︎」
一瞬驚いて目を見開いた颯斗が視界に映っていた。けれどそのまま固まったように動かないことを自分の良い方に解釈した。
僅かに開く颯斗の唇に自分のそれを近付けて……。
ただ想いをぶつけるような、そんなキスしかできなかった。
こんなことならもっとキスについて調べておけばよかった!なんて頭の隅っこでちょっと考えながら颯斗から離れた。
「好きだから!過去形じゃないからね?私の好きは現在進行形だから。……彼女ができたばかりの颯斗には悪いけど、この気持ちはそう簡単に消せないから……だから、想うくらいは許してよね」
喧嘩腰の告白にするつもりじゃなかったのに、私はいつもどうしてこんな風にしか出来ないんだろう。
また1週間口きいてくれなくなるのかな。
でも、仕方ない。
だってもう止められないから。止めるつもりもないから。
想うことは自由だ。