キミのことは好きじゃない。
言い終わってスッキリと気持ちが軽くなった。
心の中が澄み渡っていくようだ。こんなことならもっと早く言えばよかったと今更ながら思う。
「……またやり逃げするつもりじゃないよな」
低く響いてきた声に、目の前の颯斗へと視線を向けた直後、逆に後頭部を掴まれて彼へと引き戻された。
2度目の唇同士の衝突事故……と思われたそれは、私の拙いキスとは比べものにならないものだった。
唇を抉じ開けて入ってきた颯斗の口内の熱は、逃げる私の舌を絡みとり、深く、まだ深くと際限なく求めてきた。
息苦しさに胸を叩いた手を、颯斗は容赦なく押さえ込んで、舌を、歯を、唇を甘噛みする。
浅い呼吸を繰り返しながら、ただひたすら颯斗が与える愛撫に答えていた。
「百合……百合……」
ふと気づけば、キスの合間に私を呼ぶその声が、いつかの夜に見た夢と重なる。
ぼんやりとした意識の中で、あの声は現実のものだったのかもしれないと思った。