キミのことは好きじゃない。
「よかった……やっと聞けた」
「え?」
夢見心地に颯斗の顔を見上げれば、彼は嬉しそうに呟いた。
キスの後、物音に気付いて颯斗がそっと教室の入り口へと向かい電気を消した。
真っ暗になるはずだった教室の室内は、外から入る月明かりのおかげでお互いの顔が分かる程度だった。
用務員の見回りの時間だからとイタズラっぽく笑った颯斗は、私を立たせて入り口から見えないように窓際の壁を背に自分が床に座った後、私を背中から抱きしめる形で脚の間に座らせた。
そしてポツリと呟いたのだ。
「やっと……?」
「そう、やっと。百合の本当の気持ちをさ」
「ごめん……私素直じゃなかったね」
「……こっちこそ、ごめんな。もっと早くちゃんと言えばよかった。百合が他の男と付き合っていたのが、俺への気持ちの隠れ蓑にするためだったなんて全然気づかなくてさ」
「えっ、なんでそのこと……」
颯斗にバレているんだろう。誰にも言ってないのに。
「あの日に聞いた。珍しく酔った百合から、全部聞いたんだ。俺への気持ちも、全部」
「……嘘、」
「うん。酔って、その場限りの嘘でもつかれてんのかと一瞬疑った。百合がそんな手で俺のこと誘ってんのかって……」