この暴君、恋すると手に負えません
「......虹美、何があった?」
しかし今の私に暴君の声など届くはずがなかった。暴君は私の両頬に手を添えて力強い声で私の名前を呼んだ。
「虹美!!」
その声で我に返った私は、床に落ちた携帯を拾い上げた。そして心配そうに顔を覗き込む暴君と目を合わせて力なく呟く。
「......すみません」
「病院、行くぞ」
そして暴君は強引に私の腕を掴んで歩き出す。しかし私の足は動かなかった。
「......どうした?」
だって信じられない。
大好きなあのおばあちゃんが、朝だってお弁当手渡して笑顔で見送ってくれたおばあちゃんが、もういないなんて受け入れられない。
会いに行ったら嫌でもその現実を受け止めなければいけないのが、今の私には怖かった。