この暴君、恋すると手に負えません



会場は皆、それから夢中になってVRの世界観を楽しんでいる様子が見えた。

暴君も一安心したようで、全体を見渡しながら安堵の息を吐き出している。

すると光希さんは、VRに連動して映る皆の世界観を楽しんでいるように薄っすら笑みを浮かべていた。そして近くで見守っていた私に視線を向けると、ゆっくりと歩み寄る。


「虹美さんにお願いがあるんですが、少しここで見ていてもらってもいいですか?僕、お手洗いに行ってきます」
「え、でもっ」
「大丈夫です、すぐ戻りますから。もし何か不都合が生じたらこのボタンを押してくだされば問題ないのでお願いします」
「わ、分かりました」

私は不安げに指差されたボタンの位置を確認すると、光希さんは頼みますと告げてそのままステージ裏へと姿を消した。

私はパソコンの画面を見つめるとその凄すぎる世界観に夢中になってしまい、暴君の事をすっかり忘れてしまっていた。


そして、誰もが暴君から目を離している時に事件は起きてしまったのだーー......。


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