Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
   


    「なに?!」

    「そうだとしたら、王妃様が王城を離れ、
     グレイ陛下の生家ですごされていた 間のことかも
     しれません。
    
     さすがにその間のことは、私にもわかりませんし、
     当然、薬をのんでいただくこともできませんでした」



 とつぜんデリアの声がし、ウォーレスの驚きと怒りに満ちた問いに
 そう答えた。


 落ち着いた声で答えたデリアは水差しとコップをのせた
 トレイを手にすたすたと歩き、半身をおこし身をすくませている
 ミュアのところまでいくと、トレイをおいて、ミュアの肩をだいた。


 そして細い目をさらに細めて、ウォーレスを見る。


    
    「今、無理やりことにおよべば、ミュアリス様のお腹の子は、
     グレイ陛下か、ウォーレス陛下か、どちらの御子か
     わからなくなりますよ」



 ぐぅとウォーレスが唸るような声をだす。


 彼は見たこともないような恐ろしい顔でしばらくデリアとミュアを
 睨みつけていたがさっと立ちあがり髪を撫でつけると


   
    「いいだろう、日がたてばはっきりする、
     身籠っているのか、いないのか。
     それがはっきりしてから……考えればいい」



 と言い、部屋をでていった。



 ウォーレスが部屋をたちさると、デリアは抱いていた手を下ろし、
 ミュアの足元にひざまずき頭をたれた。


   
    「ミュアレス様に謝罪し、すべての真実をお話しいたします。
     グレイ様にかわり、一言、赦(ゆる)すと言って
     いただけるなら、こんなに嬉しいことは、ありません」



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