Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
議場は、ざわめきに包まれた。
唖然としている者、さっと目をそらす者、反対にニヤニヤ笑いを
浮かべじっと見入っている者、眉間にしわをよせ、
“ これが、王としての振る舞いか! “ と、怒ったようにつぶやく者。
身体を離そうと上げかけたミュアの腕を捉え、唇を離したグレイは、
さっとミュアの耳許に顔をよせ囁く。
「黙っていろ」
やっていることとは反対に、低めた威圧的な声でそう言うと、
グレイは軽くうしろにミュアを突きとばした。
よろけたミュアを支えたのは、トラビス政務補佐官だ。
「すぐに、ここを出ましょう」
やさしく気遣う声で言い、彼はミュアの背中をおしながらドアへと向い、
あわてふためいたグスマン教授がその後ろに続く。
議場を出るとき、ミュアは、少しだけ振りかえった。
神妙な顔、すました顔、怒った顔、嘲(あざけり)を浮かべた顔。
それらを前に、背筋を伸ばし、肩を張って立つグレイの後ろ姿が、
閉じていくドアの隙間に、少しだけ見えた。