Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
「こんなに早く、君のほうから会いにきてくれるとは思って
なかったから、僕はとてもうれしいよ」
大体、執務室というものは、書類の山に埋もれて乱雑になりがちだが、
いやに綺麗にこざっぱりとした室内にさりげなく視線をめぐらし、
その部屋の真ん中で、耳当たりのよいことを言っている男に、
クノエは、にっこりと笑いかけた。
「お母様をはじめ、リード家のみなさまには、大変お世話に
なりました。 トラビス様」
「わざわざ礼を言いに来てくれたの?」
「いいえ」
「そうだろうね」
「はい」
短く答え、クノエは一枚の紙をとりだす。
「祝賀会の席順表です。 デリア様に言われ、王妃様が決められたの
ですが、これでいいかと不安に思っていらっしゃいます」
「陛下に相談すればすむことじゃないかな」
「陛下がお忙しいから王妃様に、とデリア様がおっしゃったのです」
トラビスは、穏やかな表情をくずさなかったが、” ちっ ” と内心、
舌打ちをした。
王と王妃が話をするきっかけをわざわざ作ったのに、
あの叔母上は余計な一言を!
「トラビス様にご確認いただければ、王妃様も安心されます」
“ わかった ” と頷き、トラビスは紙をうけとる。