Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
「よい、式でしたな!」
同時に、グレイの右となりにすわるモーガン将軍が大声でしゃべり
かけてきて、グレイはさっと、握った左手をテーブルの下へおろした。
「そうでしたね」
将軍のほうをむいてグレイは答え、なんでもないようにそのまま
将軍と話しはじめたがテーブルの下の手は離さない。
つかの間、ミュアは戸惑い、どうしていいかわからなくなった。
だけど包みこまれる暖かさに胸の苦みが薄れていって、
震えが止まり……、だから、ミュアは自分からもグレイの手を
握りかえしていた。
やさしい笑みがミュアの口端にのぼる。
左斜めからの視線は、もう気にならなくなった。
サラダに続き、メインの肉料理がはこばれてきて、
握りあっていた手は自然に離れてしまったけれど、ミュアは自分でも
びっくりするほど自然にグレイのとなりにいることを楽しんでいた。
今日の彼はわざとらしく快活にミュアに話しかけてくるということ
もないし、無視するということもない。
落ちついた表情で、ほとんど右隣にいる老将軍と言葉をかわしているが、
時々ちらりとミュアを見る。
その日、ミュアはグレイのむける視線の意味がなんとなくわかる気がした。
今のは大丈夫かと気遣う視線?
今度は、私が誰と話しているか確かめたのね。
そしてさりげなくミュアのドレスにグレイの視線がいき、
ふとグレイの目許がやわらいだ気がした。
グレイの隣の将軍は耳が遠いのか、三回に一回はグレイに言葉に
とんちんかんな返事をする。
それが漏れきこえ、グレイが苦労して話しをあわせているのがわかると
ミュアは心の中でくすりと笑った。