Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

 祝賀会の主賓となっているが、モルガン将軍はバハムには赴いておらず、
 部下の第二連隊長が隊を率いて、三年間バハムに駐屯していた。

 第二連隊長は鷹のようにするどい顔をした男で、誰とも親しく口をきかず
 ひとりで杯をかたむけ、老将軍のむこうにすわっていたが、
 会食も終わりに近づいたころ、ひとりの兵士が隊長のうしろにあらわれて、
 なにごとかを囁いた。

 頷いた隊長が将軍に耳打ちすると、突然、老将軍はぱちんと大げさに手を
 打って


   
    「そうだったな!」



 と大声で言った。

 そしてグレイのほうへ身を乗りだすと、


   
    「部下たちが帰路、手に入れたモノだそうですぞ。
     是非、陛下にお目にかけたいと!」



 と言い、早くせんか!と誰ともなしに叱りつける。



 すぐにゴロゴロとなにか重いものを引くような音がして、テーブル席の
 むこうに大きな四角い箱を乗せた台車があらわれた。

 時折り吹く風が箱にかけられた布を吹きあげれば、ふとく頑丈そうな
 格子が見え、これが檻だとわかる。


 それまでまったく無言だった第二連隊長が、機敏な動きで檻の近くまで
 いき、くるりとふりかえり、張りのある声をだした。


   
    「陛下へのささやかな土産の品でございます。
     どうぞお近くまでお寄りください」



 そう言って隊長は鋭い視線をグレイにむける。


 グレイは、落ち着いた動作で立ちあがると、ゆっくりと檻に近づいた。

 さっと覆いがとり払われ、” おお ” というかすかなどよめきがおこり、
 何人かの貴族が立ち上がると、引き寄せられるように檻に近づく。








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