Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

 
 ズキズキと頭が痛む。

 自室のベッドにもぐりこみ、晩餐の時間になってもミュアは動かなかった。
 王と王妃の寝室にむかう時間になっても。


 しばらくしてあらわれたデリアに言う。


   
    「当分の間は、夜はこちらで休むことにしたいの」



 駄目だと言うと思ったのに、デリアは無表情に頷いて、


   
    「そのように陛下に伝えます」



 と言ってさがっていった。




 王妃ならソフィーニアが何を言っても、何をしても、平然としているべき
 だと思ったが、できそうもなく、ミュアはひとり唇を噛みしめた。


 ソフィーニアを “ ソフィ ” と呼んだグレイの声が耳に何度も蘇る。

 ミュアの知らない二人の繋がりが、その一言にあらわされているようで、
 ミュアは打ちのめされたような気分になった。


   
    「すこしだけ、すこしだけ離れて気分が落ち着いたら、
     ソフィーニアを側妃にむかえるよう陛下に話そう」



 ターラントに帰りたいと強く思い、久しぶりにオーガを見たせいか、
 シルヴィに会いたかった。

 ミュアがこんな気分のときは、いつもシルヴィが側にいてくれた。

 何も言わなくても、深いこがね色の瞳でミュアを見て、ミュアに温かさを
 分けてくれた。


 でも、今は…… 。
 自分で自分の身体を温めるように手足を縮めて腕を掴み、
 ミュアはきつく目をとじた。




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