Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
またさっきと同じ胸のうねりを感じながらミュアがグレイにむかって
足を踏みだしたとき、医務室のドアが勢いよくあき、
鮮やかなローズ色のドレスのソフィーニアが飛びこんできた。
「陛下!」
叫ぶなり彼女はミュアの前に割りこみ、座っているグレイの膝にすがりつく。
「心配しました、お怪我をされたと聞いて」
と、声をつまらせ、ぽろぽろと涙を流す。
グレイはひどく驚いた顔をしたが、すぐに苦笑いをうかべて
「相変わらず大袈裟だな、ソフィ。なんともないから泣くな」
とソフィーニアの頭に手をおいた。
そして、ちらりとミュアを見て、ソフィーニアに立つように言ったが、
彼女はいやいやとかぶりを振って、グレイの膝に顔をふせる。
若い医務官はどうしていいかわからないといった様子で、
赤くなりながら顔をそむけ、なんともいえない空気が部屋にながれた。
苦り切った声で、グレイがもう一度ソフィーニアの名を呼び、
離れるように言う。
でも、それに答えたのはミュアだった。
「お気になさらず。私が部屋をでましょう」
そう言うが早いか、ミュアは背筋をのばし足早にドアにむかった。
グレイが呼びとめたが、ミュアは振りかえらず、部屋をでた。