Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
「あ、あなたは」
声がふるえた。
黒いオーガはぐるると低く喉の奥で音をたて、撫でろというように
頭をミュアの膝の上におく。
ミュアは手をのばしオーガの頭を撫で、さらに指を滑らせて、
オーガの額の小さな瘤のようなものに触れた。
ほんとうならばそこは角があるところ、でもこの黒いオーガには
小さなでっぱりしかない。
ミュアの目に涙があふれた。
いつの間にかグレイが近くに来て、ミュアとオーガを見おろしている。
「生きていたのね、私は、もう亡くなったのだと思ってた。
だってあなたはオーガをつれていなかったし、角を失えば
オーガの生命力はおちるもの」
「城にはつれていけなかったからね。オニクスはご覧のとおり
すばらしく元気だ」
「よかった」
「きみの銀のオーガは?」
「シルヴィも元気よ、元気でいるはずだわ」
「そうか」
満足そうにグレイは息を吐いた。
「よかったらしばらくここにいないか、オニクスのそばに。
ヴェイニーが面倒をみてくれる」
そして、グレイはミュアにとってこれ以上はないという、提案をした。
「シルヴィもここに呼びよせればいい。ずっとここで暮らす
というわけにはいかないが、心と身体がもとにもどるまで」
ミュアは信じられないという目で、グレイを見た。
グレイもミュアを見つめかえす。
「私、ここにいたいわ、それに、またシルヴィと
暮らせるなんて……」
ふたたび涙が盛りあがりミュアの頬を流れおちる。
「ありがとう……グレイ……」