Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
居間が温まったからと言われ、暖炉の前の椅子に座り、
ヴェイニーからこれも飲めと、ミュアは紅茶のカップを手わたされた。
一口飲むと甘さとともに、ふんわりとアルコールを含んだ
よい香りがする。
なにか果実のリキュールがはいっているのかもしれない。
飲み終わるころには、じんわりと身体があたたまって、
心地よい眠気をかんじたミュアは深く背もたれに身体をあずけ、
目をとじた。
緩やかに時間が流れていく。
ぱちっ、ぱち、と薪のはぜる音。
そしてキィとかすかにドアがあく音。
「おや、おかえりオニクス」
とヴェイニーのひそめた声がして、誰かきたなら起きなきゃと
思うのに、あまりの心地よさに瞼がなかなか持ちあがらない。
すると、スルリと膝さきを何かが撫でて通った気がした。
続いてぺろりと膝のうえに置いた手を舐められる。
ざらりとした大きな舌の感触……、ミュアはこの感触を知っていた。
ゆっくりと目を開くと、黒い毛並みのオーガがいて、金の瞳でミュアをみている。