大切なものを選ぶこと



息を呑んでしまうくらい真面目な顔で言われ、返す言葉が見つからなかった。



自分のことしか考えていなくて、好きな人と両想いなら付き合うのが当然だと一人で舞い上がっていた自分が恥ずかしい。




「高巳君に何があったのか詳しいことは誰も知らないんだよね」




「そうなんですか…?」




「うん。弘も知らないんじゃないかな?蓮さんが絡んでるってことしかみんなわからないの」




高巳と蓮さんの間に一体なにがあったんだろう。



二人しか知らないことで、私なんかが口を挟んじゃいけない問題だってことは理解している。



でも…



「高巳にも葵ちゃんにも…幸せになってほしいです…」



弘翔の大切な人たちには幸せになってほしい。



私にとっても大切な人だから。高巳にも葵ちゃんにも笑っていて欲しい。




「大丈夫よ美紅ちゃん。みんなそう思ってるに決まってるじゃない」



明るく言って破顔した桜さん。
弘翔の笑顔もそうだけど、安心させてくれる。




「だから今は何も言わないで見守っておこう」




「……はい」




桜さんと目が合いニコリと笑いかけられる。


ちょうどそのタイミングで弘翔たちが戻って来た。




「パパッ!オレンジジュース!」


「オレンジ!!」




「はいはい。ほら」



夏樹さんと暇そうな組員さんたちを巻き込んで遊んでいた双子くんたちは戻って来た遥輝さんに勢いよく突進。



弘翔は夏樹さんに水のペットボトルを投げ渡してから私の分のお茶をくれた。



そして…遥輝さんの手には大量のベビーカステラの袋。さっき私たちが貰った量の比じゃない。


純さんが張り切ってしまった結果の産物らしい。




「やっぱ純さんのベビーカステラ美味しい~!」




「「うまい!!!」」




20年以上かけて極めたらしい純さんのベビーカステラは千賀家にも大人気だ。


なぜか自分のことのように弘翔が嬉しそうな顔をしているのも微笑ましい。




「手、洗ってくるね」



浴衣を着ているので用は足せないし、トイレに行かなくていいようにあまり水分をとらないようにしているからそこは大丈夫。



だけど、イカ焼きや焼き鳥のおかげで手がベトベトだ。


大事な浴衣は汚したくないし、手洗いに行きたい。




「場所わかるか?」




「微妙…」




「本殿の横だ。一緒に行くか?」




「ううん大丈夫。すぐ戻ってくるからビール飲んで待ってて!」




「だが…」




「いいの!弘翔が来ると人に囲まれる!」




そう言えば、『わかった、気を付けろよ』と不本意そうに言われた。




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