大切なものを選ぶこと
「「「桜さん!お疲れ様です!」」」
来客の対応がひと段落したらしく、組員さんたちが桜さんに声を掛けてきた。
あっけらかんとした口調で『お疲れ~』と片手を振る桜さんは焼き鳥を咥えてるし…。
「桜さん、高巳さん知りませんか?」
「高巳君?見てないよ。私ついさっき来たとこだしね」
「私も見てませんよ」
組員さんにチラリと視線を投げられ、慌てて答える。
「何かあったの?」
「今日の責任者、蓮さんだったんですが…高巳さんに一任すると言ってかなり前に帰られまして。この後は花火もあるし高巳さんに確認取らなきゃいけないことが結構あるんすよね」
「なるほどー。それなのに高巳君がまだ来てない…と」
「はい」
「んー…」
ここで桜さんが少しだけ口ごもった。
考えるような素振りを見せてから、
「多分、もう少しで来ると思うから大丈夫。来なかったら弘に連絡させるね」
と困ったように言った。
組員さんも『そうっすね』とあっさりと持ち場に戻った。
桜さんどうしたんだろう。
何かを言っていいのか迷っているような雰囲気だった…。
「高巳なにかあったんですか?」
「んー…そうじゃなくてね…
美紅ちゃんは葵にはもう会った?」
苦笑しながらそう言われやっと思い至った。
そうだった…。
それで高巳は遅れてるってことか。
というか…秋庭家みんな知ってるんだあの二人の事。
「多分、今ごろ高巳君は葵に捕まってるかな」
「弘翔も楓さんも…みんな二人のこと知ってるんですね」
「そりゃそうよ。葵があれだけ大々的に公言してればね」
ケラケラと楽しそうに笑っている桜さん。
「なんで高巳は葵ちゃんにだけあんな態度とるんですかね…?」
「好きだからでしょ」
恐る恐る聞いたのに間髪入れず返された。
至極当然といった感じだ。
「弘から何か聞いた??」
「高巳がもともと葵ちゃん付きの護衛だったってことだけ…」
「まぁ弘も悪友の恋路なんてあんまり話したくないだろうしね。思う事があって詳しくは言わなかったのかな」
「でも…桜さんが言うように両想いなら尚更…なんで高巳は…」
「んー…なんて言ったらいいかな」
食べている手を止めた桜さん。
また…少しだけ困った表情をしている。
「極論だけどね、弘は美紅ちゃんの為なら死ねるのよ。聖弥さんもハル君も、私やお姉に何かあったら命を懸けてくれる」
だけど…
「高巳君には葵の為に命を懸けられない理由があるのよ」