大切なものを選ぶこと
──「うわー!綺麗!!」
神社近くの河川敷に移動して花火を堪能する。
辺りは人でごった返しているけど何とか場所は確保できた。
思っていたよりも何倍もの規模の打ち上げ花火の数々はもはや圧巻だ。風流。
ビール片手に腰を下ろしている弘翔を横目で伺えば、穏やかな表情で花火を見つめている。
「毎年野郎共と見ていたが、美紅と一緒だと全然違うな」
「えー??変わんないでしょ」
「華がある」
至極真面目な顔で言われて咄嗟に目を逸らしてしまった。
別に狙ったわけではないのだろうけど、サラッと言うのは心臓に悪いからやめてほしい。
あ、そうだ。
「弘翔~」
「ん?」
「写真撮りたい!」
私たちは今まで一度もツーショットを撮ったことがない。
撮ろうと言い出すタイミングがなかったのもあるけど、弘翔が殆ど携帯を触らない人だから私も二人でいるときは自然と携帯に触れていないことが多いのだ。
それに…何となくだけど、弘翔は写真とか好んでないと思っていた。
「珍しいな」
「んー…何かあった時の為に弘翔の写真欲しいなって」
口に出してから後悔した。
言わなくていいことを言ってしまった…。
私の言葉に少しだけ眉間に皺を寄せた弘翔は何かを言いかけて…、やめた。
花火を楽しんでいる時に真剣な話し合いは避けてくれたみたいだ。
「いいぞ、撮るか」
言いたいことを飲み込んでくれた弘翔に甘えて今はお祭りを楽しむことに専念する。こんな時に重たい話なんか興が覚めるだけだ。
初めて二人で撮った写真は私の最新スマホの高画質カメラのおかげでなかなかいい感じ。
と言っても、彼氏様はスマホの性能関係なく写真写りも抜群なんだろうけど…。
「それ、俺にも送っといてくれ」
「うん!」
いつだったか由美子が言ってたけど、人に撮ってもらうより自撮りの方が彼氏とくっついて撮れる。
たしかにこれは…思わずにやけてしまうくらい距離が近くていい写真だ。弘翔は貴重な浴衣姿だし。
待ち受けにでもしようかな。
──なんやかんやで、花火鑑賞には途中から千賀家も加わり、純さんがまたしてもベビーカステラを届けてくれたりと賑やかな感じになった。
弘翔は二人きりで見たかったみたいだけど、こういうワイワイした雰囲気も嫌いじゃない。
花火を満喫して、本部に少し顔を出してから弘翔と二人で帰路に着いた。