大切なものを選ぶこと
──「…っく!……みく!…美紅!!」
誰かが遠くで呼んでいる声がして、ゆっくりと意識が戻る。
あぁ…夢だったんだ。
それに…死ねなかったし、悠太を殺すこともできなかったんだ…。
ベッドサイドに腰かけている悠太を見て自嘲的な笑みがこぼれた。
「美紅…良かった…」
悠太が安堵の溜息を吐く。
身体を起こそうと動かすと、脇腹に激痛が走った。
「あ、まだ安静にしておいた方がいいよ。肋骨が折れてるって…」
「…なんで…病院なんかにいるの…私…?」
「あの後、美紅は意識を失って倒れたんだよ…。それで俺…どうしていいのかわからなくてさ…救急車呼んだんだ…」
「そう…なんだ…」
そうか、あの後…倒れたんだ。
なんで死ねなかったんだろう。死ねばラクになれたのに。
「ごめん美紅…あんなことになるなんて思ってなかったんだよ…」
「……………」
「ただ…ただ、美紅に愛してほしかったんだ…」
「……………」
この人は何を言ってるんだろう。
そう思っても悠太を刺激したくなくて口を閉ざす。
「もっと美紅のこと大事にするからさ…」
世間一般の人が見たらイケメンに見えるであろう笑顔を浮かべた悠太は、
「だから、もう一回やり直そう?」
私にとっては死刑宣告のような言葉を落とした。
──その時
「その必要はない」
聞こえるはずのない、私の大好きな低くて甘い、少し掠れた声が室内に響いた。