大切なものを選ぶこと
一か月ぶりに足を踏み入れた秋庭さんの部屋は良くも悪くも何も変わっていなかった。
「適当に座ってて。茶くらい淹れるよ」
そう言った秋庭さんは台所へ向かった。
やることもなく手持無沙汰だったのでテーブルの近くに腰を下ろした。
──改めて見てもやっぱり生活感のない部屋。
前は置いてあった書類の山はなくなっている…
「だから、そんなに見ないでくれって」
苦笑いを浮かべながらお茶を渡してくれた秋庭さん。
中身はこの前と同じ紅茶だった。
いつも飲んでいるやつとは全然違って、やっぱり高級な味がする。
──私が紅茶を飲んで一息吐いたのを見た秋庭さんがおもむろに口を開いた。
「何から話せばいいのか…。
情けない男でごめんな。いつもはもうちょっと上手く格好がつくのに、どうも美紅の前じゃそうもいかないらしい」
「秋庭さんは…初めて会った時からずっと…今だって…カッコいいですよ」
そうだ。初めて会ったあの時からずっと…
私は秋庭さんの声に、顔に、優しさに…ずっと魅せられてるんだ。
いっぱい後悔して、いっぱい泣いて、なんであの時に…って何度も思った。
会いたくて、恋い焦がれて、ずっと好きだった人が今目の前にいるんだ。
言わなければならない言葉はあの時から何一つ変わっていない。
「待っててくださいって言ったのに…自分で解決するって言ったのに…本当にごめんなさい…」
でも、それでも、やっと会えたのだから…この言葉は伝えさせてください…
「私は…秋庭さんのことが…「待ってくれ」」