大切なものを選ぶこと
秋庭さんに手を貸してもらって車を降りた。
肋骨が折れているのは本当らしく、鈍い痛みが走ったけど歩けないほどではない。
私よりも…秋庭さんの歩き方に違和感があるように思うんだけど…
──「…お二人は…?」
秋庭さんと私以外は車から降りていなくて不思議に思って声を掛けると、助手席の窓を開けたイケメンさんが困ったように笑った。
あ、やっぱり笑った顔もかなりのイケメンだ…
「悪友で上司の一世一代の告白劇なんて見たくないよ」
言って、想像したらしく、イケメンさんは爆笑し始めた。
運転席にいるスキンヘッドさんも肩を震わせている…
秋庭さんは何とも言えない顔をして頭をガシガシ掻いてるし…。
「君が弘の話を聞いて…俺たちが何をやってる人間なのか分かった上で、それでも弘と一緒に居ることを決めたなら、俺たちも腹を括るよ」
「……え…?」
「自己紹介はその時だ」
「………」
「君にはまだ選択肢があるからね。俺たちの名前や素性なんか知らないほうがいい」
とても綺麗に笑ったイケメンさん。
そのままひらひらと手を振って、窓を閉めてしまった。
「お互い、話さなきゃいけないことがあるからな。すべての決着がついたら…あいつらのこと、ちゃんと紹介させてくれ」
「……わかりました」
何とも言えない空気のまま秋庭さんに手を借りてアパートの階段を上がった。
──部屋の前まで来て考える、どっちの部屋に入るのだろうか…。
そう思って秋庭さんを見ると、小さく笑って秋庭さんの部屋を開けた。
「今はあいつのことは忘れて、俺のことだけ考えてくれ」
小さく呟いた秋庭さんの言葉に頷いて部屋に入った。