紳士系同期と恋はじめます


明美ちゃんの呼び出しを受けて、元原さんが現れたのは、それから30分後だ。

「で?何で俺は呼び出されたっけ?」

仕事終わりの元原さんが手に持つのは、ノンアルコールのビールだ。潰れた元原さんを女2人で抱えて帰るのは、不可能に近いため、アルコールは遠慮してもらった。

「糸に聞いたよ。いつも、糸のこと、お持ち帰りしてるんだって?」

「言い方悪いぞ。明美」

元原さんは、不快そうに眉を寄せる。

「送り迎えをしているだけだ」

「そうだよ!本当に送り迎えして頂いてるだけなのに……」

明美ちゃんは何を言うのか。
紳士的な彼にお持ち帰りという言葉は似合わない。

そんな私と元原さんの反論など聞こえなかったかのように、明美ちゃんはカラカラ笑って、ビールを飲む。

「あわよくば、送り狼を狙っていたりして」

元原さんと明美ちゃんの視線が絡み合い、一瞬の間のあと、元原さんは瞳を逸らして吐息した。

「……俺が狼になったら、ますます糸川さんに嫌われるじゃん」

「……?」

「……ほう」

狼?
嫌う?

明美ちゃんは納得したような顔をしているが、私はイマイチ話がついていけない。

「……私は、どんな元原さんでも、嫌いになりませんよ?」

優しくて、紳士で、頼れる存在。
そんな彼をどうして、嫌いになれるだろう?

私は正直な感想を言ったまでなのに、元原さんは微妙な反応をする。

明美ちゃんは呆れたように笑った。

「無自覚にも程があるでしょう」

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