王太子の揺るぎなき独占愛
「ずっとこうしていられたらいいのに……」
サヤは森を抜けて到着した離宮の窓を順に開けていく。
ルブラン家の女性は王家の森を管理し、男性は騎士団に入って王族の警護にあたる。
貴族の中でも際立って王族に近いルブラン家との縁を結びたがる貴族はもちろん多く、サヤとの結婚を望む男性もかなりいる。
しかし、王家の機密事項のいくつかを知るルブラン家の人間の結婚は、すべて国王の許可が必要で、これまではサヤの結婚を国王が認めることはなかった。
ルブラン家の誰よりも知識が豊富で森を愛しているサヤを国王は気に入っていて、簡単に手放すつもりはないのだ。
けれどサヤも十八歳。
そろそろ結婚のことも真剣に考えなければならない年齢になった。
とはいえ、結婚したくないサヤは、どうにか理由をつけて、一生王家の森で過ごしたいと考えている。
家は十六歳の弟のファロンが継ぐ予定で、いずれ近いうちにサヤの居場所はなくなるだろう。
姉思いの優しいファロンがサヤを追い出すことはないだろうが、ファロンが主となり妻を迎えた家に、サヤの居場所はない。
「この離宮で暮らせたら最高なんだけど」
結婚なんてせずに、王家の森を大切にしながら生きていきたい。
サヤは最近、本気でそう考えている。