王太子の揺るぎなき独占愛
サヤが住んでいる屋敷から森を歩いて半時間ほどの場所に王家の離宮が建っている。
以前は王族の勉強会などに使われていたのだが、最近では王家の森の世話をするために泊まり込む者たちが利用している。
普段から森の管理にはかなりの時間と手間をかけているが、季節によっては何人かで泊まり込んで森の世話をすることもあり、森の中にあるこの離宮はその際に利用するにはもってこいなのだ。
何度も離宮に泊ったことがあるサヤは、待ち構えていた王城の執事ジークに軽く挨拶を済ませて二階の一番奥にある部屋に入った。
ここにくるたびいつも使っているこの部屋は南向きの窓から差し込む光で明るく、かなり広い。サヤは窓を開けて、部屋の脇にある大きなベッドに飛び込んだ。
離宮の管理を城から定期的に寄越される侍女たちが完璧に行っているおかげで、ベッドもふかふかで太陽のにおいがした。
サヤはうつぶせのまま手を伸ばし、ベッドヘッドに並べられたクッションを引き寄せた。
「石鹸のいいにおい……。いつもありがたいわ」
クッションに顔を埋めたまま深呼吸すると、サヤのお気に入りの石鹸のにおいがした。彼女が今日ここに来ると聞いた城の侍女たちが準備したのだ。
離宮をキレイに掃除し、サヤが使う寝室のベッドを整え、サイドテーブルにはいくつものキレイな花が飾られている。
もう少しすれば、城からシェフがやってきておいしい食事を用意してくれるはずだ。
今日のメニューはなんだろうと、サヤはわくわくする。サヤの家にもシェフはいるが、王家専属のシェフが作るものには敵わない。
材料の質も違うのだから当然だが、サヤにとってこの離宮での食事は極上で、いつも楽しみにしている。