王太子の揺るぎなき独占愛



 今日は、森が冬を迎える前に済ませておかなければならないことを片づけようとやってきた。
 予定では二、三日泊まるつもりだ。

 サヤはベッドの上で体を大きく伸ばし、ゆっくりと仰向けに転がった。

 この離宮に泊ることが誰よりも多いサヤ専用の部屋ともいえる部屋の中には、サヤの洋服やお気に入りの本、そして森での仕事に必要な道具が幾つも置かれている。
 サヤ好みの淡いピンクの壁紙は、城の使用人たちと一緒に貼り、調度品や家具はサヤの母カーラが用意してくれたお気に入り。

 長い間過ごしているせいか、サヤはここを第二の我が家のように感じている。

「やっぱり、ここで暮らしたいな」

 見慣れた天井の模様を見ながら、サヤは低い声でつぶやいた。

「だめだめ、私が落ち込んでたら、森の命も力を落としちゃう」

 サヤは熱くなった目の奥を押しやるように力強く起き上がった。

「せっかく天気もいいし、頑張ろう」

 勢いよくベッドから降り、慣れた手つきでクローゼットからいくつかの洋服を取り出した。
 森での仕事がしやすい服に着替えるのだ。

 足元がきゅっと絞られた柔らかい生地のズボンと、胸元の飾りボタンがかわいいシャツ。そして鮮やかな青に染められた糸で編まれたカーディガン。

 いつもの服装に着替えれば、気持ちも浮上するはずだ。

 サヤはワンピースを脱ぐために腰のリボンを外そうと手を当てた。

 そのとき、部屋の外から騒がしい音が聞こえた。



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