王太子の揺るぎなき独占愛



「お待ちください。サヤ様にはなにもお伝えしておりません。殿下っ」

 ひとりではなさそうな靴の音が響き、その音は次第にサヤの部屋に近づいてくる。

 高い声で叫んでいるのはジークだ。

 いつも落ち着いている彼の焦る声に、ただ事ではないものを感じたサヤは、部屋のドアをそっと引いて開けた。

「ジークさん、どうした……えっ」

 ドアを開けた途端、勢いよく誰かが飛び込んできた。

「きゃあっ」

 突然のことに驚いたサヤは、バランスを崩し後ろに倒れそうになった。

「悪い。大丈夫か?」

 床にしりもちをつきそうになったサヤを、力強い腕が伸びて支えた。
 床に打ち付けられるのを覚悟していたサヤは、何が起こったのかと視線を上げた。

「どこも痛まないか?」
「あ、あの……」
「お前が来る予定だと聞いて、立ち寄ったんだが。驚かせて悪かった」
「だ……大丈夫です。あの、レオン殿下……?」

 部屋に飛び込んできたのは王太子レオンだった。

 支えるようにサヤの背中に手を回し、もう一方の手で彼女の頬を撫でる。

< 14 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop