王太子の揺るぎなき独占愛
「お待ちください。サヤ様にはなにもお伝えしておりません。殿下っ」
ひとりではなさそうな靴の音が響き、その音は次第にサヤの部屋に近づいてくる。
高い声で叫んでいるのはジークだ。
いつも落ち着いている彼の焦る声に、ただ事ではないものを感じたサヤは、部屋のドアをそっと引いて開けた。
「ジークさん、どうした……えっ」
ドアを開けた途端、勢いよく誰かが飛び込んできた。
「きゃあっ」
突然のことに驚いたサヤは、バランスを崩し後ろに倒れそうになった。
「悪い。大丈夫か?」
床にしりもちをつきそうになったサヤを、力強い腕が伸びて支えた。
床に打ち付けられるのを覚悟していたサヤは、何が起こったのかと視線を上げた。
「どこも痛まないか?」
「あ、あの……」
「お前が来る予定だと聞いて、立ち寄ったんだが。驚かせて悪かった」
「だ……大丈夫です。あの、レオン殿下……?」
部屋に飛び込んできたのは王太子レオンだった。
支えるようにサヤの背中に手を回し、もう一方の手で彼女の頬を撫でる。