王太子の揺るぎなき独占愛



 目の前にあるレオンの端正な顔に、サヤの体は一気に熱を帯びた。
 凛々しく意志が強そうな目で見つめられ、息が止まりそうになる。
 鍛えられた筋肉質の体に包まれれば、身動きひとつできない。

 サヤはしばらくの間息を詰め、レオンをただ見つめた。

 滅多に会うことのない、王太子殿下。
 体温を感じるほど近づいたことなど、もちろんない。

 気が遠くなりそうなほどの驚きに、これは夢かもしれないと思いながらも、夢ならもうしばらくこのままでいたいと、まばたきすら忘れてひたすらレオンを見つめた。

「サヤのまつ毛、長いな」

 サヤを見つめ返しながら、レオンは体勢を整えた。
 不自然な格好のサヤをしっかりと立たせると彼女の顔を覗き込み、目にふっと息を吹きかけた。

「えっ」

 レオンの吐息を感じたサヤは、慌てて両手を目に当てた。思ってもみなかったことに動揺し、さらに体は硬直した。
 そんなサヤの気持ちにかまうことなく、レオンはサヤの両腕をつかんで目から離した。

「息を吹きかけるとまつ毛がかなり揺れたぞ。それによく見れば俺と同じ薄いブラウンの瞳なんだな」

 腰を落とし、うれしそうに話すレオンに、サヤは恐る恐る視線を向けた。

「レオン殿下……あの、えっと……」

 どうしてここにいるのか。
 それに、どうしてレオンはこんなにサヤの近くで笑っているのか。
 何が何だかわからず、やっぱりこれは夢なのかと戸惑った。


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