王太子の揺るぎなき独占愛
サヤが王妃に選ばれたことで、本家から聞きたくないことを言われたのだろう。
まさかサヤが王妃に選ばれるとは、誰も思っていなかったはずだ。それはサヤ本人が一番強く思っている。今日も、自分よりもイザベラの方が王妃にふさわしいと改めて思ったばかりだ。
「なんでも、ジュリア様がどうしてもイザベラを一緒に連れて行くとおっしゃってるらしいわよ」
「そうなの……」
サヤはふと、ジュリアの極彩色のガウンを思い出した。
何日もかけ、体調を崩すほど、そして結婚への不安を忘れるために熱中して編んだガウン。
とても鮮やかで美しく、それでいて切なさが感じられた。
ジュリアがラスペードにイザベラを連れて行きたいのも、不安でたまらないからだろう。
長い間自分の警護として側にいたイザベラに、この先も側にいてほしいのだ。
「だったら、そのことでイザベラは泣いていた……?」
レオンが頼み込んでいたのはこのことで、イザベラが作業部屋でレオンに抱きつき泣いていたのは、ラスペードにジュリアとともに行くのが嫌だから……だろうか。
そう考えれば、イザベラの涙の意味もわからないではないが、サヤはそれ以外の思いも含まれていたような気がした。
イザベラの騎士としての誇りとジュリアへの忠誠心を考えれば、ジュリアとともにラスペードに行くこともすぐに承知しそうなものだが、どうしてあれほどまでに嫌がっていたのだろう。
サヤはじっと考えるが、結局なにも思い浮かばない。
「私って、なにも知らないんだな……」
こんな自分が王妃になってもいいのだろうか。
レオンに迷惑ばかりをかけそうだ。
落ち込み続け、なかなか気持ちを浮上させることができないサヤは、これではいけないと小さく首を横に振った。