王太子の揺るぎなき独占愛



「うん。知らないことだらけじゃなくて知らないことばかり。最初のうちは目眩がしそうだったけど、今はかなり知識も増えたし、先生から誉められることもあるから、大丈夫だと思う。自信はないけど」

 控え目な口調でそう言って笑うサヤに、カーラは「ごめんね」と言って頭を下げた。

「サヤが王妃に選ばれるなんてまったく考えてなかったし、サヤは森のことに夢中でなにも教えてこなかったから、今頃苦労してるのよね。親の責任だわ。ごめんなさいね」
「そ、そんなことないから、気にしないで。森のこと以外、なにも知ろうとしなかった自分のせいだし、母さんのせいじゃない」
「でも……」
「本当に大丈夫。とはいっても、たしかに知らないことばかりで毎日新鮮だけどね。王家のひとはみんな優しいからちゃんと教えてくれるのよ。今日も、ジュリア様がご自分の布や糸をすべてくださったの」
「布? 糸?」

 首をかしげるカーラに、サヤは今日の出来事を簡単に伝えた。

「ジュリア様はドレスや帽子も作られているみたいでね、ステキな作品がいくつもあったの。作業部屋ごと譲っていただくなんて驚いたけど、無駄にしないように頑張らなきゃ」
「そう、かわいがっていただいてるようで良かったわ。だったら、何度も練習して、軍服に素敵なビオラの刺繍をしなきゃね」

 カーラはそう言って、サヤの頭を優しく撫でた。
 まるで小さな子どもにするような手の動きに、サヤは照れくさくなる。

「あ、ジュリア様が嫁がれるとき、イザベラも警護担当としてラスペードに行くって本当なの? 本家は今大騒ぎにだけど」
「え、それも、聞いてない。行ったきりで帰ってこないの?」

 初めて聞くことに、サヤは驚いた。イザベラがこの国を離れるとは考えられない。

「イザベラは本家の顔っていうか、ルブラン家の象徴でしょ? ただでさえイザベラではなくサヤが王妃に選ばれて落ち着かない状態だったのに……」

 カーラはそう言って口をつぐんだ。



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