王太子の揺るぎなき独占愛
「だから、俺の思いを疑うようなことはやめてくれ」
「は……い」
サヤは赤い顔をさらに赤くして笑うと、ふと思い出したように表情を引き締め、口を開いた。
「私……イザベラのように器用ではないのですが」
「は? イザベラ?」
サヤの口から突然イザベラの名前を聞かされ、レオンは我に返った。
自分の胸にすっぽり収まっているサヤを見ながら、どういうことだと混乱する。
あれだけイザベラのことを誤解していないかと悩んでいたというのに、すっかり忘れていた。
まさか、やはり誤解しているのだろうか。
焦るレオンの様子に構わず、サヤはレオンの胸に頬を預けた。
「私よりもイザベラの方が王妃にふさわしいと思うのですが、こうして殿下の胸に抱かれて……この温かさを感じるのは、私だけにしてほしいのです」
「は? それは、当然だろう?」
サヤの遠慮がちな言葉に、レオンは思わず大きな声をあげた。
まさかサヤ以外の女性を抱きしめるわけがないのに、どうしてそんなことを言うのだと思った瞬間、気づいた。
「サヤ、お前、やっぱり見ていたのか? 作業部屋で、俺がイザベラと話していたとき……」
レオンはサヤを胸から引き離し、顔を覗き込んだ。
「ち、違うぞ。あのときは、嫌がるイザベラを説得していたんだ。ジュリアの警護として、しばらくラスペードに留まるよう、頼んでいたんだ」
レオンはサヤの肩に置いた手に力を込めた。
悲しそうに見上げるサヤの表情から目が離せない。