王太子の揺るぎなき独占愛




 激しく打つ鼓動を感じながら、どうにか気持ちを落ち着かせようとしたとき、サヤがもぞもぞと動き、顔を上げた。
 大きな目は潤み、頬は赤く染まっている。

「サヤ、どこまでお前は……」

 とろけそうな声を隠すことなく、レオンは笑いかけた。
 長い間自分のものにしたいと願い、恐れ多くも現国王に退位を求めてまでも手に入れた愛しい宝。
 レオンはサヤの頬を優しく撫で、満ち足りた吐息をこぼした。

「ワインのせいで、顔が赤いな。……誰にも見せたくないほどかわいらしい」

 思わず口を突いて出たレオンの言葉に、サヤは拗ねたような声でつぶやいた。

「嘘です。ちっともかわいくないし、なにもかも、だめなんです」
「どうして嘘なんだ? 誰よりも可愛らしく、愛しいぞ?」
「愛しい……なんて。本当なら、とてもうれしいですけど。私はまだまだ王妃にふさわしくないですし、そんなことを言ってもらえる資格はありません……」

 サヤはレオンの言葉を信じていないのか、あっさりと受け流した。
 レオンはその反応が気に入らず、吐き捨てるように声をあげた。

「王妃にふさわしいかどうかは今関係ない。俺は、サヤが愛しくてたまらないんだ。どうすれば、信じてもらえるんだ」

 レオンの強い口調に、サヤは息を詰めた。

「サヤにしてみれば、突然王妃に選ばれて生活が一変して、俺の気持ちをすんなり受け入れられないのはわかるが。俺の気持ちを疑うのはやめてくれ」
「あ……は、はい」
「前も言っただろう? 今はまだサヤが王妃の器でないなら、俺もまだ国王の器ではないと。それは、ふたりで時間をかけていけばいいんだ。いずれ俺もサヤも、立場に見合うだけの成長をしているはずだ」

 諭すように話すレオンのぶれない思いに気づかされ、サヤはこくりとうなずいた。


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