王太子の揺るぎなき独占愛



 その後しばらくして、そろそろそ食事も終わるころだろうと、ハンクと侍女たちがデザートとコーヒーを運んできた。
 ところが、ふたりはまだスープを飲み終え、メインの肉料理を食べているところだった。

「ハンク、このスープは絶品だな。ステーキもうまいぞ。サヤもそう思うだろ?」
「はい。ポワレもとてもおいしくいただいています。ハンクさんのお料理はいつもおいしくて食べすぎちゃいます」

 レオンとサヤは顔を見合わせ小さく笑っているが、たしか向かい合って座っていたはずなのに、並んでいる。

 それも、お互いの膝が触れ合いそうなほど近い距離で。

 ハンクも侍女たちも、レオンとサヤの間になにかがあったと察した。
 それも、ふたりの仲が急速に近づくなにかが。

「マカロンとコーヒーは、こちらに置いておきます。お食事のあと、ご自由にお召し上がりください」

 ハンクの言葉にレオンとサヤは同時にうなずき、再び顔を見合わせくすくす笑い出す。

 料理を出してからかなりの時間がたち、温めなおしたほうがいいだろうと思うが、ふたりの笑い声を聞いたハンクはなにも言わず部屋を出た。

 結局、レオンとサヤが料理を食べ終え、冷めたコーヒーを飲んだのは、それからずっとあとのことだった。




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