王太子の揺るぎなき独占愛
フェリックが止めるが、シャリオの昂ぶった感情が収まることはない。
レオンはしばらく様子を見守ったあと、おもむろに口を開いた。
「とりあえず、国に残っているラスペードの騎士たち二百人ほど、その集会所に向かわせよう。盗賊たちは全員確保してラスペードの刑吏に引き渡す。人質となった家族たちは医師のもとに運んで健康状態を診てもらえ。医師が足りないのであれば我が国に連れてきてもよい。そのあたりは現場に任せる」
落ち着いた声で指示を出すレオンの声を聞き、シャリオは徐々に冷静さを取り戻していく。
「シャリオ、父親にこれ以上犯罪を犯してほしくなければ冷静になれ。爆弾を抱えている以上、下手に刺激をすることはできないし、チャンスは一度きりだ。もしも感情のコントロールができなければこの任務から外す。わかったな」
冷たいとも思える低い声で、レオンはシャリオに告げた。
これは訓練ではなく実践で、最悪の場合、大量の爆弾が爆発し、多くの命が失われるのだ。
「申し訳ございません。今後は冷静に動きますので、どうかこのまま任務に当たらせてください。お願いします」
レオンの言葉に目が覚めたのか、シャリオは慌てて頭を下げた。
「わかった。とにかく全員救出するぞ……作業員だけでなく、犯人たちも全員」
レオンはそう言ってテントから外に出た。
そして周辺で待機している騎士たちに顔を向けると、慣れた仕草で合図を送った。
すると、一部の騎士たちが足音も立てずひそやかに歩き出す。
ファウル王国騎士団の中でも足に自信のある者たちで作られた第二団の騎士たちだ。
百人ほどの騎士が一斉に動き出し、事務所の周りをあっという間に取り囲んだ。
それはほんの数十秒のできごとで、ほかの騎士たちは第二団の後ろについた。
総勢五百人以上の騎士が事務所から麓近くまで整然と並ぶ姿は圧巻で、自分が犯人ならすぐに投降するだろうと、レオンは苦笑した。