王太子の揺るぎなき独占愛
犯人たちは、窓から見えるはずの騎士たちの数に気づくだろうか。
そして、こんな無駄なことはやめるべきだと悟ってくれるだろうか。
レオンが大勢の騎士を従えてここに乗り込んだのは、数による勝利を考えたからだ。
これほど多くの騎士の姿を見れば、普通なら白旗をあげ、あきらめるはずだが。
しかし、家族を人質に取られている今、その可能性は低いだろうと、レオンは考えていた。
それどころか、犯人たちは爆薬の扱いにも慣れていない農民たちだ。
思い余ってなにをしでかすかわからない。
それこそ爆弾が暴発することだってあるのだ。
犯人を刺激せず、効率的に作業員たちを救い出さなければならない。
「さっさと終わらせてサヤのもとへ戻りたいんだが」
レオンは王城を出る直前まで抱きしめていたサヤを思い出した。
素晴らしい出来栄えのビオラの刺繍を完成させたサヤは、ようやく王家に嫁ぐ自覚と自信を得て輝いていた。
それに、毒を作らなければならないという酷な慣例に涙する顔を思い出せば、自分への愛情がひしひしと伝わってきた。
レオンの命を絶つことなど考えられないと訴える姿は、ずっと見ていたいと思うほど美しく、そんな加虐的な自分に自嘲したのもたしかだ。
「俺のことで悩むサヤを、まだまだ見ていたいんだよな」
思わず本音を口にし、レオンは苦笑した。
「どうかなさいましたか?」
レオンがニヤリと笑う姿に、傍らに控えていた騎士が怪訝そうな顔を見せた。
「いや、なんでもない」
レオンは慌てて表情を引き締めた。