王太子の揺るぎなき独占愛
ファロンの優しい声に、サヤは無理矢理笑顔を浮かべ、何度かうなずいた。
「わかってるけど、十八歳になった途端結婚の話がたくさん持ち込まれて……今は陛下がお断りしてくれているけど、そろそろどこかの国の貴族様との結婚を決められるかもしれないから……」
これまでは王家の森の知識が多いサヤを嫁がせることに難色を示していた国王だが、最近ではサヤの結婚についてあれこれ考えているらしいと、父親から聞いている。
今朝も、近いうちに陛下から呼び出しがありそうだと言っていたが、きっとサヤの結婚の話が持ち込まれたのだろう。
王太子が国王に即位する際、ルブラン家の女性の中から王妃が選ばれるが、選ばれなかった女性は有力貴族から婿を迎える場合が多い。
王家の森や王族の内情に通じているルブラン家の女性を他家に嫁がせず、婿を迎えて王家の情報を漏らさないようにするためだ。
もちろん、迎える婿については精査され、結婚後知り得たことについては口外しないことを誓わされる。
もしも実家に王家についての情報を伝えた場合、実家は取り潰される。
ただ、他国から縁談が持ち込まれた場合は、国王の判断によって嫁ぐこともある。
国益につながる場合のみ、ではあるが、可能性はあるのだ。