王太子の揺るぎなき独占愛
「イザベラったら……」
レオンとサヤは、照れながら顔を見合わせた。
ふたりの顔は赤く、目は潤んでいる。
おまけに微かに腫れあがった唇を見れば、今まで何をしていたのかひと目でわかる。
イザベラにからかわれても仕方がないかと、レオンはくすりと笑った。
「悪かった。俺が落ち着いていればよかったんだが、サヤがあまりにもかわいくて抑えが効かなかったな」
レオンはゆっくりとサヤを抱き上げると、そのまま足湯から出て歩き出した。
サヤは慌ててレオンの首にしがみつくと、焦った声をあげた。
「違います。私がレオン殿下にキスをしちゃったので……抑えが効かなかったのは、私の方で……」
照れくさそうにつぶやくサヤに、レオンは再び口づけた。
「レオンと呼びたかったんじゃなかったのか?」
「え、はい……そうですけど」
感情に任せ、キスだけでなく、レオンと呼び捨てにしていたことを思い出し、サヤの顔はいっそう赤くなる。
「呼びたければ、そう呼べばいい。俺のことを呼び捨てることができるのは、サヤだけだ。あ、陛下夫妻もいたな」
思い出したようにそう言って、レオンは笑顔を浮かべた。
「それに、サヤが俺とキスをしたければ、いつでも俺は大歓迎だ。我慢しなくてもいいぞ」
さっきふたりをからかったイザベラにも負けないほどにやにやして、レオンはサヤにささやいた。
サヤはレオンに横抱きにされながらその言葉を聞いて、気を失ってしまいたいほど恥ずかしくなった。
どうして自分からキスなんてしたんだろうと、心の中で何度も繰り返すが、何度考えても出てくる答えはただひとつだ。
レオンを愛しているから。
その思いに尽きる。
レオンが命を落とすかもしれないと苦しんだ反動であるのもたしかで、それに加えて、その苦しみを考えればなんでもできると、自分の思いに素直になりすぎたからだ。
サヤは、目の前にある、楽しげに笑うレオンの横顔を見つめた。